《使用済自動車処理の変遷》

 現在、日本の自動車保有台数(登録車、軽自動車)は7,500万台(平成22年11月現在)に達しており、その中から毎年350万台前後のクルマが使用済自動車となって自動車解体業者の手を通じて回収、解体、再利用、再資源化されています。
 かつて、国内で発生する使用済自動車の処理が適正に行なわれなかった時期がありました。従来、自動車としての役割を終えた使用済自動車は、鉄、非鉄金属などの回収、再資源化が可能であることから、解体業者、破砕業者などが使用済自動車を原料とするリサイクル業を営んできました。その結果、自動車のリサイクル率は重量ベースで80%を上回るなど、耐久消費財中の優等生と言われていました。
 1990年代の後半、法律が変わって、これまで廃車ボディーから鉄、非鉄金属などを回収する破砕工程の残差物(シュレッダーダスト、但し自動車由来のものはASRと呼ばれる)の処理方法が、「安定型処分場」埋め立て方式から「管理型処分場」埋め立て方式に強化され、その結果、元より数の少ない「管理型埋め立て場」の残余払底、埋め立て料金の高騰を呼び、これまで有価で取引されてきた使用済自動車は、費用を支払って処理をしてもらう廃棄物(逆有償状態)となり、不法投棄や不適正処理が蔓延するようになりました。

《リサイクル法への道順》

 そのような状況を改善するために構築されたのが、いわゆる「自動車リサイクル法」であり、使用済自動車の逆有償化の原因である流通上のボトルネックを解消するため、車のユーザーに費用を負担を仰ぎ、自動車製造業者(輸入業者を含む)の責任において3品目を引き取って適正に処理する仕組みが作られ、2005年1月1日より本格施行されるようになりました。
 ここで言う3品目とは、①自動車エアコン用冷媒として使用されるフロン類 ②爆発性の高い化学物質の燃焼時に発生するガス利用して衝突時の乗員を保護するエアバッグ類 ③車体破砕工程で発生する残差(ASR)のことを指します。
 自動車リサイクル法の施行に先立ち、自動車メーカーが進めたフロン類の自主的回収・処理、同じく、エアバッグ類の自主的回収・処理ならびにマニフェスト制度の自主的取り組み等が関係者の協力により行われましたが、不法投棄、路上放置等の改善に繋がらなかったことから、関連する政府審議会の議論等を経て法律制定となりました。

《自動車解体業の役割》

 自動車リサイクル法が定める解体業者の役割として、エアバッグ類の適正な処理があげられますが、多くの解体業者は、「フロン類回収業者」の名のもとで、フロン類を回収して自動車メーカー等に引き渡す役目を果たしています。 さらに、リサイクル法に定められた、自動車に使用されるタイヤ、バッテリー、液類など5品目の除去と適正処理が解体工程で行われますが、その他の役割として、中古部品の供給があげられます。
 近年、日本における自動車の平均使用年数は近年著しい伸びを示しており、現在、自動車リサイクル促進センターのデータによると、既に使用済みとなった車両の平均使用期間は、2004年の11.4年に対し、2009年では13.5年となっており、 自動車リサイクル業界が供給する中古部品は、自動車をできるだけ永く使用しようとするユーザーの皆さんの負担を軽くするばかりではなく、新品部品の製造に比べ消費エネルギー量は格段に小さいため、CO2の排出を抑え地球温暖化防止に役立っています。